次の文を読み 109~111 の問いに答えよ。
Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事でから間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病(depression)と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。
問題109
このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
1. 「生きていれば良いことがありますよ」
2. 「薬を飲むと数日で効いて楽になります」
3. 「悲しいことが続くときは誰にでもあります」
4. 「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」
解説:Aさんは、うつ病による死念を抱えており、強い絶望感と孤独感に包まれています。このような状況において、看護師は以下の3点に留意する必要があります。
①【患者の話をよく聞き、共感を示すこと】: Aさんの気持ちに寄り添い、話をじっくりと聞くことが重要です。「つらいですね」「大変でしたね」など、共感を示す言葉をかけることで、Aさんは孤独感や孤立感を軽減することができます。
②【患者の感情を否定しないこと】: Aさんは「生きていても仕方がない」「誰も分かってくれない」と、強いネガティブな感情を抱いています。このような感情を否定したり、励ましたりすることは逆効果となる可能性があります。むしろ、Aさんの感情を受け止め、「つらいと感じているのですね」と共感を示すことが大切です。
③【希望的な言葉よりも、現状を受け止める言葉をかけること】: Aさんは現在、非常に困難な状況に置かれています。「薬を飲めばすぐに楽になる」などの希望的な言葉は、Aさんの現状とのギャップが大きすぎて、かえって虚しく感じさせてしまう可能性があります。むしろ、「今はつらい時期だけど、一緒に乗り越えていきましょう」など、Aさんの現状を受け止め、寄り添う姿勢を示すことが重要です。
上記の点を踏まえ、解答4の「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」が最も適切な対応と言えます。そしてこの言葉は、Aさんのつらい状況を理解し、寄り添っていることを示すと同時に、患者の不安を和らげる効果も期待できます。
ちなみに解答1「生きていれば良いことがありますよ」:希望的な言葉ではありますが、Aさんの現状とのギャップが大きすぎて、かえって虚しく感じさせてしまう可能性があります。解答2「薬を飲むと数日で効いて楽になります」:抗うつ薬の効果を過度に強調しており、患者の期待を裏切ってしまう可能性があります。また、うつ病の治療には時間がかかることを理解していない対応と言えます。解答3「悲しいことが続くときは誰にでもあります」:共感しようとしている姿勢は評価できますが、Aさんのつらい状況を軽視しているように捉えられてしまう可能性があります。
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