
<領域: 介護> 総合問題(総合問題3)
次の事例を読んで 問題122について答えなさい。
[事例]
Dさん (男性, 障害支援区分4) は, ベッカー型筋ジストロフィー(Becker muscular dystrophy) である。 自宅で家族と生活をしている。 Dさんは、食事は自立しているが,排泄、入浴に介護が必要である。 歩行はできず, 移動は電動車いすを使用している。 絵を描くことが趣味であり、日中は創作活動に取り組んでいる。これまでDさんは自宅で家族の介護を受けながら生活してきたが, Dさんの身体機能の低下に伴い, 家族の介護負担が増えたため、 居宅介護を利用することになった。
問題122
Dさんが居宅介護を利用してから数年が経過し, Dさんの身体機能は徐々に低下して, 着替えに時間がかかるようになった。 Dさんは自分のことはできるだけ自分で行いたいという思いがあり,時間がかかっても自分で着替えをしていた。ある日, DさんはF介護福祉職に, 「着替えをすると疲れてしまい, 絵を描くことができない」とつぶやいた。 F介護福祉職は, 「着替えは私たちや家族の介護を利用して, Dさんは好きな絵を描いたらいいのではないですか」と伝えた。 その後、Dさんは介護福祉職と家族の介護を利用して, 短時間で着替えを済ませ, 絵を描くことに専念できるようになった。
F介護福祉職が発言した自立観を示した人物として、 最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ヴィクトール・フランクル (Frankl, V.)
2 バンクミケルセン (Bank-Mikkelsen, N.)
3 エド・ロバーツ (Roberts, E.)
4 フェリックス・バイステック (Biestek, F.)
5 ミルトン・メイヤロフ (Mayeroff, M.)
解説:設問のポイントは以下となります。
・Dさんは「できるだけ自分でやりたい」という意志を持っているが、着替えに時間がかかることで趣味の絵を描く時間が減ってしまうというジレンマを抱えている。
・F介護福祉職は、Dさんの希望を尊重しつつ、介護を活用することで本人の生活の質(QOL)を向上させるという考え方を示している。
・この考え方は「真の自立」とは何かを考える上で重要な概念であり、障害者運動や自立生活の考え方に関連している。
各解答の解説は以下となります。
解答1:ヴィクトール・フランクル (Frankl, V.)→ 不正解
→ ナチスの強制収容所を生き延びた心理学者で、「生きる意味の探求」や「ロゴセラピー(意味療法)」を提唱した。
→ Dさんの状況とは直接関係がないため不適切。
解答2:バンクミケルセン (Bank-Mikkelsen, N.)→ 不正解
→ デンマークの知的障害者福祉の改革者で、ノーマライゼーション(障害者が健常者と同じように社会で生活できることを目指す)の概念を発展させた。
→ Dさんのケースと関連はあるが、F介護福祉職の発言の考え方とは少しずれる。
解答3:エド・ロバーツ (Roberts, E.)→ 正解
→ アメリカの「自立生活運動(Independent Living Movement)」の先駆者。重度障害者が「介助を受けること=依存」ではなく、「主体的に選択して自立する」という考えを広めた。
→ Dさんが介護を受けることでより自由に創作活動に集中できるようになったことは、まさにロバーツの考え方に合致する。
解答4:フェリックス・バイステック (Biestek, F.)→ 不正解
→ 社会福祉における「ケースワークの7原則」(個別化、意図的な感情表出の許容、統制された情緒関与、受容、非審判的態度、クライアントの自己決定、秘密保持)を提唱。
→ 支援者の基本的態度には関係するが、自立の概念とはズレる。
解答5:ミルトン・メイヤロフ (Mayeroff, M.)→ 不正解
→ 「ケアの本質」を研究し、ケアすることが相手だけでなくケアする側の成長にもつながると説いた。
→ 介護福祉職の姿勢としては重要だが、「自立」の考えとは少し異なる。
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